残念な反応
今回は2019年に騒がれた「老後2000万円問題」について、いま考えていることをお伝えしたいと思います。
とても言いにくいことですが、「老後2000万円問題」については、残念な反応の連鎖が起きたと思っています。金融庁の報告書は、高齢社会を取り巻く環境変化について整理し、考えられる対応についてまとめたものです。「夫婦2人が95歳まで生きると2000万円不足する」などと断定しているわけではなく、私は非常にまっとうな提言だと感じました。
ところが当初、メディアは報告書をきちんと読み込んだとは考えづらいほどに、内容を捻じ曲げてセンセーショナルに報道しました。正確に情報を伝えることより、不安をあおって人々の関心を引くことを優先したのだとすれば、レベルが低い仕事だと言わざるを得ません。
さらに、参議院議員選挙を控える中、野党はこの問題を政治利用しようとしました。「2000万円の赤字を自分で用意しろというのか」「100年安心の年金制度というのは嘘だったのか」などとトンチンカンなことを言って責め始めたのです。
それに対して与党からは「(報告書は)評価に値しない」「国民に誤解を与えた」といった声が上がり、麻生大臣は金融審議会の報告書の受け取りを拒むという暴挙に出ました。
こうした一連の経緯は、非常に残念なものでした。しかし実は、私が個人的にもっと残念だと思っていることがあります。それは、資産運用業界がこの問題に向きあえていないのではないかということです。
資産運用業界の「役割」
報告書では、冒頭で「個々人においては『人生100年時代』に備えた資産形成や管理に取り組んでいくこと、金融サービス提供者においてはこうした社会的変化に適切に対応していくとともに、それに沿った金融商品・金融サービスを提供することがかつてないほど要請されている」と述べられています。つまり、資産運用業界には老後資金不足という人々の不安に応える商品やサービスの提供が求められているのです。
それにどう応えていこうとしているのか、今こそメッセージを発するべきタイミングだったはずなのに、業界大手企業からもそういった発信はありませんでした。
いまこそ資産運用業界は金融機関として役割を果たさなければいけないと考えています。
「老後2000万円問題」の前提にあるのは、平均寿命が上がっている中、年金で老後の面倒をすべてみてもらうのは無理だという現実です。
50年ほど前まで、日本人の寿命はだいたい67歳でした。当時は55歳定年ですから、50代でも「これ以上働くのは難しい」というくらいにヨボヨボになっている人も多かったのでしょう。年金制度は当時そういった人々の面倒をみるものとして設計されており、働かずに「年金暮らし」をするのはだいたい12年ほどだったわけです。
しかし平均寿命はどんどん延びています。
金融庁の報告書でも「現在60歳の人の約4分の1が95歳まで生きる」という試算が紹介されています。「人生100年時代」に60歳で定年退職すれば、「老後」が40年も続くことになります。だいたい20歳から60歳までの40年間働いたとして、その間に次の40年分の蓄えをつくるというのはかなり難しいでしょう。
「老後2000万円」不足しないための4つの方法
ではどうすればいいのかというと、やるべきことは明確です。1つは、元気で働ける限り、長く働き続けることです。
寿命の延びとともに「健康寿命(介護を受けたり寝たきりになったりせず、日常生活に制限がない期間)」も延びているのですから、かつて60歳だった定年が70歳、75歳と延びていくのも自然なことでしょう。
もう1つは、若いうちにたくさん稼ぐことです。老後の心配をすることなく暮らせるくらいに稼げるなら、それも一つの方法でしょう。また、細く長く暮らしていくように支出を抑えることも選択肢になります。そしてもう1つの方法が、将来に備えて収入の一部を投資に回していくことです。
(1)できるだけ長く働く
(2)現役時代にたくさん稼ぐ
(3)支出を抑えて暮らす
(4)長期投資で増やす
という4つの方法を組み合わせていくしかないのです。
このように、「老後2000万円問題」に対して私たち個人が取りうる解決策はシンプルです。しかしこれらが実行されるかというと、特に「できるだけ長く働く」「長期投資で増やす」についてはさまざまな問題があります。
1つは、「自立する気持ち」が欠けている人が少なくないことです。社会全体が成立するには「自助・共助・公助」、つまり自分が自分を助けること(自助)、お互いに助け合うこと(共助)、そして行政による支援(公助)を組み合わせることが必要です。健康で元気に働ける人は自助をベースとし、健康を失うなど事情があって働けない人を共助や公助でサポートしていくのがあるべき姿でしょう。
お金は天から降ってきたりはしませんから、自分たちで稼ぎ、自分たちで生活し、自分たちで将来に備えるというのが原則です。自己責任という言葉は厳しく聞こえることもありますが、社会全体の基本は「自己責任と自立」であり、自分の人生は自分でカバーするのが本来のあり方だと思います。
もし、健康で働くことができるのにもかかわらず共助や公助に期待しているなら、それは自立心が足りないと言わざるを得ません。働けるのに働かない人を助けましょうということになって、まともに働く人が減っていけば、国が滅びることになるでしょう。どのような社会であれ国家であれ、働ける人が一生懸命働いて一生懸命稼ぐことが基本なのです。
強い思い込み
長く働き続けることを考えると、「仕事をすることそのものが楽しいかどうか」というのも問題になります。
「嫌なことを我慢したり、意に反することをしたりするのが仕事というものだ」と思っている人は少なくないでしょう。しかし、苦痛が多くストレスが溜まるばかりの仕事をずっと続けるのは無理があります。ですから、これからのしごと選びは「楽しく働けるかどうか」を基準にすべきでしょう。
先日、私は学生向けのセミナーで「就活で会社を選ぶときに大事なのは、初任給でいくらもらえるかではなく、好きなことをやれて70歳でも80歳でもその仕事ができそうだと思えるかどうかです」という話をしました。同様に、すでに働いているみなさんにも、仕事そのものを見直すことをお勧めします。
今の仕事は70歳になっても楽しくずっと続けていられるのかという観点で考えてみてください。もし「無理だ」と思うなら、長く続けられる仕事に切り替えるなり、楽しめる副業を初めてみるなりすることが必要かもしれません。
もう1つの問題は、国民全体の金融リテラシーの低さです。金融庁が2016年に実施した「国民のNISAの利用状況等に関するアンケート調査」では、「これまでに、学校や職場で金融や投資に関する教育を受けたり、勉強したことがありますか」という問いに71%がノーと回答しており、これらの人に「今後、金融や投資に関する知識を身に付けたいと思いますか」と尋ねたところ、その67.2%がノーと答えています。
3分の2の人が金融教育を受けたことがなく、さらにその3分の2はこれから勉強する気もないというのですから、およそ5割の人が「投資なんて勉強したこともないしやる気もない」という絶望的な状態にあるわけです。背景には、「投資をしたり、投資について勉強するのは悪いことだ」という強い思い込みがあるのではないかと思います。
日本のターニングポイント
実際、今回の「老後2000万円問題」に関して金融庁が投資による資産形成の検討に触れていることに対し、「素人には投資はできない」「投資を勧めるなんてとんでもない」といったコメントも見られました。こういったコメントをしている人は、勘違いをしていると思います。彼らが考えている「投資」は、おそらくマーケットの動向をウオッチし、タイミングを図って頻繁に売買を繰り返すようなものでしょう。
一方、金融庁が報告書で触れているのは「長期・積立・分散投資」で、実はこれこそ投資の「王道」です。長期・積立・分散投資は誰でも手軽にできる方法であるばかりでなく、金融庁が「リスクをコントロールして一定のリターンをもたらしやすい」「多くの人にとって好ましい資産形成のやり方」と説明しているように、たいへん有用なものです。
こうした資産形成を後押しするため、近年、国はDC(企業型確定拠出年金)、iDeCo(個人型確定拠出年金)やつみたてNISAなど「長期・積立、分散投資」を税制面で優遇する制度をつくってきました。これらの制度は私たちの自助をサポートするものであり、実際に多くの人がこれらの制度を活用して着々と老後に向けた準備を始めているのです。私は、一人でも多くの人がこれらの素晴らしい制度を活用し、毎月3000円でも5000円でも、できる金額で長く積立を継続していくことが大事だと思っています。
そして企業型確定拠出年金導入支援会社である、私たちレメディー・コンサルティングは、この「老後2000万円問題」に対し、確定拠出年金の普及の責任を負っていくという決意を新たにしています。こういった現実を伝え、投資の意義や必要性を説明していくのはもちろん、投資により資産形成する機会をより幅広く、より大きな規模で提供していきたいと考えています。
レメディー・コンサルティング株式会社では、オーダーメイド型の企業型確定拠出年金プラン
「SBIみらい年金プラン」をご提供しております。
税制メリットも大きいこのプランは、加入者が1名でも制度を導入可能です。
制度設計や導入だけでなく、運営上の事務手続きも、専門知識を持ったコンサルタントがしっかりサポートいたします。
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